■はじめに
ランニングやマラソンをしている方にとって、アキレス腱の痛みは決して珍しいものではありません。
その中でも特に多いのが、「走り始めだけ痛くて、そのうち痛みが消える」というスターティングペインと呼ばれる症状です。
スターティングペインは一見軽い症状に思えますが、放置すると慢性化し、アキレス腱付着部炎や腱断裂など重症化する可能性があります。
今回ご紹介する症例は、年に数回フルマラソンに挑戦する40代男性ランナー。
数年前から走り始めに右かかとの後ろ(アキレス腱付着部)に痛みがあり、気にせず走り続けていたところ、次第に日常動作にも影響が出てきたため来院されました。
■患者様のプロフィールと生活背景
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年齢:40代
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性別:男性
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職業:デスクワーク中心(1日8時間以上座位)
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趣味:フルマラソン、ハーフマラソン、週4〜5回のランニング
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主訴:走り始めに右アキレス腱付着部が痛い(数分後に軽減)
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既往歴:特に大きな外傷歴なし
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ランニング歴:10年以上、年間走行距離は約3000km
■症状の経過
患者様は数年前から走り始めに痛みを感じることがありましたが、走っているうちに痛みが引くため放置していました。
しかし、近年は以下のような変化がありました。
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走り始めの痛みが強くなる
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朝ランの1歩目からかかとの後方がズキっとする
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ランニング後のストレッチ不足で翌日の痛みが増す
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坂道やスピード練習後は翌日の痛みが顕著になる
さらに、走らない日でも朝起きて一歩目に痛みを感じるようになり、不安になって来院されました。
■症状の特徴と診断
症状の特徴
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走り始め(特に朝ラン)に右アキレス腱のかかと側に痛み
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数分走ると痛みが軽減し、その後は走れる
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走行後や翌朝に再び痛みを感じることがある
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圧痛はアキレス腱がかかとの骨に付着する部分に集中
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ふくらはぎ全体に張り感あり
想定される診断
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アキレス腱付着部炎(Insertional Achilles tendinopathy)
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ふくらはぎ筋群の短縮・柔軟性低下
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足関節背屈可動域の制限
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ランニングフォームの崩れによる衝撃増加
■アキレス腱付着部痛の原因
1. アキレス腱付着部炎
アキレス腱はふくらはぎの筋肉(腓腹筋・ヒラメ筋)からかかとの骨(踵骨)に付着します。
走行中の繰り返しの牽引や衝撃により微細な損傷が生じ、炎症が起こります。
2. ふくらはぎの硬さ
腓腹筋・ヒラメ筋の柔軟性が低下すると、アキレス腱付着部への引っ張りストレスが増加します。
特に長年ランニングを続けている方は、筋肉が慢性的に硬くなりやすいです。
3. 足首の可動域不足
足関節背屈が制限されると、ランニング時に踵が十分に上がらず、着地衝撃がアキレス腱に集中します。
4. フォーム・シューズの問題
ソールの薄いシューズや、過度なフォアフット走法も負担を増やす要因です。
■当院での評価結果
当院での動作・姿勢評価の結果、以下の所見が得られました。
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アキレス腱付着部の圧痛(特に内側寄り)
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ヒラメ筋の短縮が顕著
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足関節背屈可動域の低下
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片脚立位での安定性不足
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ランニングフォームで接地時に踵の沈み込みが大きい
■施術プラン
1. 万能ストレッチ整体(下肢・足関節の可動域改善)
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足関節背屈モビライゼーション
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腓腹筋・ヒラメ筋のリリース
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足底アーチ機能改善
2. 鍼治療(炎症・筋緊張の緩和)
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アキレス腱付着部周囲への刺鍼
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ヒラメ筋・腓腹筋への深部刺鍼
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微弱電流で血流促進・炎症抑制
3. セルフケア&フォーム修正
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ふくらはぎストレッチ(朝・ラン後)
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エキセントリックカーフレイズ(腱の強化)
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着地衝撃を減らすフォーム修正(やや踵寄り着地)
■施術経過
初回〜3回目
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鍼治療後、朝ランのスターティングペインが軽減
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足首の可動域が改善し、接地衝撃が減少
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デスクワーク後のふくらはぎの張りも減少
4〜6回目
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エキセントリックカーフレイズの導入でアキレス腱の耐久性向上
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20km以上のランでも走り始めの痛みがほぼ消失
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セルフケアが習慣化
現在
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月1回のメンテナンス施術+セルフケア継続
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朝ラン開始時も痛みなく走れる状態を維持
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フルマラソンで自己ベスト更新を狙えるコンディション
■ランナー向けアキレス腱セルフケア
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ふくらはぎストレッチ(腓腹筋)
壁に手をつき、膝を伸ばしたまま後ろ足のかかとを床につけて伸ばす(20〜30秒) -
ヒラメ筋ストレッチ
膝を軽く曲げた状態で同様に後ろ足を伸ばす(20〜30秒) -
エキセントリックカーフレイズ
段差の上でつま先立ちし、ゆっくり踵を下げる(左右各15回)
■まとめ
今回の症例では、ふくらはぎの硬さ・足首の可動域不足・フォームの問題がスターティングペインの原因でした。
適切な施術とセルフケアにより、走り始めの痛みは改善し、快適にランニングを続けられるようになりました。
アキレス腱の痛みは「そのうち治るだろう」と軽視しがちですが、早期の対応がパフォーマンス維持とケガ予防の鍵となります。
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